第10章(6/12) 人の心の裏を読むくせがついているこの章で大林先生は、治験薬の効果について、二つの例をあげていらっしゃいます。 ひとりめは、うつ状態の44歳の女性M子さん。 M子さんは、先生のところに通院しはじめてから約一年が過ぎていました。彼女は、先生のところに来るまで10年以上も精神科をふくめ、さまざまな医療機関で治療しても変わらなかったので、先生は簡単に治らないと見込んでいました。薬の処方を変更してもあまり効果がみられなかったのでそのままになっていたのですが、M子さんはなんとかしたいと考えていたようで、新薬でもないかときいてきました。 そのときたまたま、先生の手元に治験薬として抗うつ剤があったのでそれをM子さんに話して、試してみることにしたのです。治験薬とは、まだ通常の治療薬として厚生省から許可が下りておらず、試験的に条件つきで臨床に使えるものです。 この治験薬で、M子さんのうつ状態は改善され、同居していた夫の両親との関係もよくなったのです。 でも、大林先生は、この改善に満足していないようです。 「今までの彼女と姑のあつれきはなんだったのか。関係改善はよいことではなるが、長年の問題がたった二週間足らず薬を飲むことで変わっていいのだろうかと考えたりもした」とのこと。
彼女は高校時代からときどきふさぎこむときがあり、自分は他の人とは違っていると思っていたそうです。 精神科ではうつ病と診断され、抗うつ剤をしばらく飲んでみたけれど変わらなかったとのこと。 彼女は、ガスの元栓を何度も確認しないではいられない「確認強迫」や、友達と遊んで楽しい最中に何か心配事を探してそちらにこだわってしまい、暗い気分になってしまう癖に悩んでいました。自分は何か虚しさのようなものがあり、楽しいことを暗くすることでバランスを取っているのではないかというのです。この方は、すごく鋭くご自分の心理を洞察されていると思います。セルフ・エスティーム(自己評価・自分を尊重し大切にする気持ち)が低いあいだは、楽しむことを自分に許せないからです。 たまたま週刊誌の記事に、日本では未発売の抗うつ剤が落ち込みにも強迫にも有効とあったので、それを手に入れたくて先生のところに来院したのでした。 先生のところにあった治験薬の成分が、彼女の希望する薬と成分がほぼ同じだったので、それを飲んでもらうことにしました。しかし、S子さんの場合、六週間の治験期間が終了しても効果はありませんでした。 とはいえ、治験薬の投与はダブル・プラインド(二重目隠し?!)という形をとります。治験薬とよく似た対象薬が用意されて、そのどちらかの薬が処方されるのですが、患者さんにも、薬を出す医師にも、どちらの薬かわからないように外見もわざわざ似せて作る。効果がなかったのは対照薬だったのかと思いきや、 製薬会社から、彼女が飲んだのは本物の治験薬だったことを知らされたのでした。 大林先生はその後、S子さんへ定期的な面接(カウンセリング)をなさったようです。そのなかで、彼女のなかにあった「安心したり楽しんだりすると必ず悪いことが起こる」という思い込みのもとが、育った環境にあったことが、わかってきたのでした。 しかしそれから半年たっても、症状がなくなったわけではないそうです。 もちろんそれだけでは症状はなくならないですね。 先生は、「次善の策として、さまざまな治療がある」とおっしゃっていますが、もう一歩、二歩、前に進んで、比較的簡単に安全に、すぐに修正できる方法も、じつはあるのです。(^^) それは、『プライベート・アイズ』セミナーでお教えしています。
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