第7章(2/12) 抑うつ状態「なにをやっても母から認めてもらえなかった」Fさん。36歳男性。精神科への入院は二年前からでこれが四度目。 大林先生は、上司の勧めに従って、この患者さんの奥さんと面接することにします。奥さんは大林先生からみて、「美人ではあるが、どこか生活に疲れたともいえる印象を抱いてしまう人」でした。
ここでも大林先生の患者さんとの面接は、心理カウンセリング的な展開になっていきます。 「主人と知り合ったのは職場が一緒だったからです。あのころの主人は、昔を知らない人には信じてもらえないほど、いつも光っていました。会社でもとにかく精力的で、仕事はテキパキやるし、 (中略) 主人はどうなったんでしょうか。私と結婚してからなんだか色あせたようになってしまって。私は疫病神なんでしょうか。
私が優しすぎるのが悪いのかなとも思います。 私はいい妻です。やるべきことは全部やりました。主人のために健康食品を買ったり、私の態度を変えてみたり、厄払いまでやりました。でももう、三年ですよ。期待するのはとうにやめています。こうして先生に話すだけでも情けなくなって……」 そういって泣きだした。 私のためにわざわざ出向いてもらったうえに、いやな思いまでさせてしまい、申し訳ないことをしてしまったと反省したが後の祭りだった。 Fさんはその後まもなく退院し、私の担当を離れた。 (中略) その後、Fさんを思い出すことはなかった。(164ぺージ) 大林先生は、自覚なさっていないようですが、とても良いカウンセラーのようです。「彼女はほとんどひとりでしゃべった。」とありますが、人の話を聞くというのは辛抱がいることです。大林先生は、Fさんの奥さんに自分の気持ちを好きなだけ吐き出させて、受け止めてあげたのです。 この面接、実質的には『カウンセリング』が、Fさん夫婦の関係を大きく変えていくとは、このときは誰も予想していなかったようです。 その後Fさん夫婦がどうなったか、くわしくは、ここには書きません。なぜなら、本一冊を出すのには執筆者他の知的労働があってのことですので、読み所を全部インター・ネットで無料で公開してしまったら申し訳ないというか、権利者に損失を与えることにもなってしまいます。 このぺージは、あくまでも、気に入った本、参考になる文献のレビュー(書評)の範囲で、また、心理療法やカウンセリング、心療内科や精神科の治療について考えるために書いています。 くわしくは、実物の本でお読みになって下さいね。男女関係にはかつての親子関係が色濃く影響するという点で、とても興味深いケースです。
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