対人恐怖症・フォーカシング

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第4章(10/12) 対人恐怖症「自分を否定する気持ちがいつも消えない」

28歳。高校教師をしている知的な感じの女性の悩みは、教師仲間との雑談がうまくできないこと。

対人恐怖症は、精神科の診療内容の範疇に入ると思うのですが、同じ悩みで心療内科を受診する人が少なくない理由を、大林先生はこのようにおっしゃっています。


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ところで、対人恐怖は心療内科でもっぱら扱う疾患とはいえない。
しかし受診する人は少なくない。

その理由のひとつとして、この人たちが書いた問診表が参考になる。
そこには主訴として、対人恐怖のほかに動悸や発汗、腹痛などの体の症状も書かれていることが多い。

もちろん対人恐怖は心臓神経症や過敏性腸症候群などと合併しやすいので、それは当然であるが、もうひとつの理由がありそうだ。

それというのも、彼女の場合もそうであるが、こうした問題を抱える人は、医師も人間であるので、診療場面でも緊張するのではないかと心配しがちだ。
もし緊張した場合、体の症状を主訴として書いておけば、体の問題だけを話して、精神的な問題に触れずにすますことができる。

そして実際に会ってみて安心できそうだと判断したら、はじめて人前で緊張してしまうという悩みを語るという手段が取れる。

つまり、精神科ではなく心療内科を受診した場合は、いわば逃げ道を作っておけるという面があるようだ。(120ぺージから)
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私(平井)の意見は大林先生と微妙に違います。たいていの人は、体の具合が悪くなれば、体のどこか(特に内部)が病気になったのだと考えて心配したり不安になる人が多いのではないでしょうか? 病気といえば、体の病気のほうが馴染みがあるのです。心も病気になるというのは、まだまだ正しく広く一般に認識されていません。

それに、精神科に行って『この人精神病患者?』という目で見られるのが嫌だし、そもそも精神科はどんなところなのか想像もつかず、怖い人が多いのではないでしょうか?

あるいは、『精神科』というと、もう完全に狂った人?が収監?されるところで、普通に社会生活ができている自分と全然関係ないと思っていたりして、対人恐怖症や視線恐怖症など、が、精神科の治療になるということは、思い当たらないのでは?などと、考えています。

だいたい、精神科ってところは、訪れた患者?にどういう治療をしてくれて、どう治っていくのかがハッキリしていないことも、不安な気持ちをかきたてられませんか?

でも、精神科は、それほど変わったところではないようです。基本的に患者さんの話を聞いて、薬をくれるところ、という感じでしょうか。

基本的には薬物療法をしているところが多いみたいですね。あとは、森田療法(作業療法・園芸療法)などかな。

精神疾患は、何年も長く病む、とか、治らない、とされていますが、もしも将来、精神療法がもっと完成されて、種類も増えて、その人に合う精神療法を施すことが可能な治療環境がととのえば、総じて、入院・通院日数が大幅に短縮されて、完治率もぐんとアップすると思います。


寛解ではなく、治癒です。完治です。


以前、うつ病や自律神経失調症患者を集めて座禅会を続けている、高齢のお医者様に、質問させていただいたことがあります。

「どうなったら、鬱病とか自律神経失調症とかが、すっかり治ったとか、良くなった、といえるんでしょうか?」と。

すると、その先生は長年の臨床経験からきっぱりと断言されました。

「こういう病気なんてのは、罹ったかかったら治るってことは(一生)ない。せいぜい、寛解と言ってな……(以下略)」

と、(素人はこれだからダメだ)みたいな感じで、ちょっと軽蔑しているような、差別するような感じで、完全否定していらっしゃいました。

でも、重い神経症を完治させた証人が、いるのです。ここに。その先生に反論する気もなかったので、自分が神経症を治したことは黙っていましたけど、心の病気は、医療関係者が思っているよりも何倍も、治る可能性があるのです。

ちなみに、寛解とは、症状が消えて安定しているけれど、たとえば薬が手放せないとか、けっきょくまだ治っていない状態のことです。

●フォーカシングの技法

似たような体験を何度もしてきた大林先生は、遠方からやってきて、仕事の関係で、次はいつ来れるかわからないというこの女性のために、 フォーカシングの技法を簡単に教えます。

しかし最初の面接でここまでやったのは、心的援助としては、あまりよくないことだったのか、大林先生は、「後になってから、一回の外来でそこまで欲張ってやったのは、私の背伸びだったと反省した。そして、そうしてしまった理由が私の側にあると気づいた。」「実は、私自身も似た体験が何度もあるので、彼女の悩みが人ごとと思えなかったのだ。」と書いていらっしゃいます。

先生がフォーカシングのやり方を具体的に書いてくださっていますので、すみませんが、引用させていただきます。

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私のやり方は、帰りの電車のなかなどで、そのときに感じている体の感覚、たとえば胸に残っているモヤモヤした感じをそのまま、そこにあるものとして味わう、という単純なものである。(111ぺージ)

「私は苦しい」という感じは、実は「私の一部に苦しいという感じがある」と表現できる感覚であり、私全体が苦しいのではないと気づくことは、フォーカシングが狙っていることの核心のひとつだと考えている。(118ぺージ)
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フォーカシングは、有効なセルフコントロールの手法のひとつのようですね。自分の感情を感じることはとても大切で、癒しのために必要です。

私(平井)も、フォーカシングと似ていますが、それをもっと改良して、不安を消すまで一連の方法を、『プライベート・アイズ』セミナーでお伝えしています。

さて、フォーカシングは、この女性患者さん、どんなふうに役立ったのか? 女性はこう言っています。

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「あのやり方、けっこう役に立ちますね。最初にやり方を聞いたとき、いやな感じを味わうのは自分を苦しめるだけじゃあないかと思ったんですけど、違うんですね。(117ぺージ)(中略) うまくいえないけど、苦しい感じは自分全体を覆うというより、もっと狭い、胸の一部だけの感覚といった感じになるんです」
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二回目に来院した彼女は、「人前で緊張するようになったきっかけ」にまつわる話として、小学生のときピアノの発表会で失敗したことを出します。そこから、大林先生の質問に答えて、子供時代のできごとを打ち明けます。

二人きょうだいの姉は自己主張が強くて、自分とは正反対だったこと。子供のころお菓子を分けるときは、姉は、自分のほうが少しでも小さいと、妹の私のと取り替えようとしたこと。抵抗すると大騒ぎになり、母に叱られた。すると、自分がおとなしくなるしかなかったこと。

ある日、自分のスイカが小さかったとき、ふと姉がいつもやっているように振る舞ってみようと思いついた。

私に大きいのをちょうだいと怒って、受け入れられないと、もういらないといって、家を出るふりをした。内心では、母親がいつも姉にたいしてそうするように、止めてくれると期待して。でも予想に反して、全然相手にされず、引っ込みがつかなくなり、そのまま家を飛び出した。けれど、誰も探しに出てこなかった。

夕方になって家に帰ってみたら、その小さいスイカが手つかずでそのままになっていた。。。

彼女は淡々と話を続けます。

「私にしては大胆な行為だったんですけど、姉の真似をしても似合わないんだと思いました。姉は自分が思ったことをそのまま表現できる。私はなぜかできない。その差がどこにあるのかは自分ではよくわからないんです。」


これは、私(平井)にしてみれば、わかりきったことだと思うのです。

なぜ彼女が姉と同じく振舞うことができないのか? 同じことをやっても、なぜ母親の反応が違うのか?

答えはそのまま、彼女のお話しのなかにそっくり出ているではありませんか?

親がそういう態度を次女の彼女には許さなかったから、です。長女には許して、助長?すらしても…。


加藤諦三先生がおっしゃったように、片方が強くてわがままで自己中心なとき、弱いものに向かって、「喧嘩をせずに仲よくしろ」と目上の者がいうことは、弱いものを圧迫する結果になってしまうのです。


『幸せの絆を求める女たち―心療内科の診察室から』大林正博著・アマゾン紹介リンク

この本の内容

第3章 ボーダーラインケース(境界例の症例)(1/12)

第7章 抑うつ状態(2/12)

第6章 反応性うつ病(3/12)

第1章 神経性過食症(4/12)

第2章 神経性食欲不振症(拒食症)(5/12)

第10章 人の意向にばかり合わせるくせがある(6/12)

第9章 自律神経失調症(7/12)

第8章 過敏性腸症候群(8/12)

第5章 パニック障害(9/12)

第4章 対人恐怖症(10/12)

第11章 解離性障害(11/12)

エピローグ そして誰もが絆を求めている(12/12)


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