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生の本能対死の本能

フロイトは、1920年、『快感原則の彼岸』という論文を発表した。戦争神経症患者の見る夢が、フロイトが先に提唱した、「夢は願望の実現であり、快感原則(不快なことを避け、快を求める)にのっとっている」いう理論ではうまく説明がつかなかったため、新しく「生と死の本能」という別の仮説を立てたのである。

戦争神経症とは、兵士がかかる病気である。戦場で生命の危機に立たされ、恐怖のために足腰が立たなくなったり、全身が麻痺したりする。また、復員してからも、戦場での恐ろしい体験を何度も夢に見てうなされたりする。一刻も早く忘れたい体験のはずなのに、患者は何回も同じ悪夢を見る。

こうしたことから、フロイトは「人間は、快を求める性質ばかりでなく、不快を求める性質も持っているのではないか」と仮定し、これまでの性本能と自我との葛藤という理論は新たな展開を見せることになった。

ギリシャ神話には、エロスとタナトスという神が登場する。エロスは秩序と愛の神。タナトスは破壊と混沌と死の神で、破壊本能と呼ぶこともある。エロスのエネルギーはリビドーで、対立するタナトスのエネルギーはモルティドーと呼ばれる。


【平井のコメント】夢で何度も恐ろしい体験を再現するのは、そのときに受けたトラウマが癒されていないからだと思います。

また、昔受けて合格した資格試験に落ちる夢を何度も見るというような例は、その試験に合格したから今があるんだぞという、無意識からのメッセージなのではないでしょうか。本人がそうと意識していなくても、無意識に考えていること、感じていることは、何らかの形で夢のなかに現れてくるものです。

フロイトが晩年になって発表した「生と死の本能」理論は、カール・A・メニンジャー(メニンガー)博士が、そのあとの研究を引き継いだようです。『おのれに背くもの(上)』『(下)』を書いたメニンガー博士の人間愛にあふれた温かなまなざしは、「自分は神経症だ、病気だ、異常だ、異質だ、異端だ、欠陥人間だ」と悩んでいた私に、明るい光りと希望を与えてくれました。

精神科で「患者」としての「取り扱い」「処遇」を受ける人間が立ち直るきっかけや原動力になるのは、治療者のどういう姿勢か、私はメニンガー博士から教えていただいたような気がします。


・このページは、『深層心理なるほど講座』という本がとてもおもしろかったので、
おもな内容を、私のコメントつきでまとめたものです。
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