(2)不安神経症の心理療法(精神療法)治療成功実例/『血と言葉』のあらすじ

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『血と言葉――被精神分析者の手記』作品紹介

 
『血と言葉――被精神分析者の手記』は、作家カルディナル自身が、
精神分析を七年間受け続け、言葉によって自分の内面を建て直していった、
その実体験をつづったドキュメントという、希有(けう)な作品です。

なぜなら、精神分析は患者の個人的な事情に深く立ち入るものですから、
そこで発見した真実も、当然他人には口外しにくい内容が多いのです。
 

『血と言葉――被精神分析者の手記』著者マリ・カルディナル紹介

カリディナルは、1929年、当時フランス領だったアルジェリアで、
富裕なフランス人入植者の一家に誕生しました。

1962年に出版した処女作『海に耳傾ける』で国際第一作品賞を受賞。
その後も、小説、エッセイを発表。

『血と言葉』が上梓されると、有名新聞雑誌が書評で絶賛。
カリディナルのもとには、一日200通もの読者からの共感や
悩みを訴える手紙が舞い込み、討論会や講演への出席依頼が相次ぎました。

その後、フェミニスト(女性解放運動者)として、
寄稿、講演など、積極的に活動しました。
 

『血と言葉――被精神分析者の手記』ストーリー

既婚で三人の子供を持つ主人公の『私』は、30代前半の女性であり、
国語(フランス語)教師のキャリアがあります。

内面に深い悩みを抱えるようになり、子宮からの原因不明の不正出血が続き、
強い不安や対人恐怖のために、仕事も外出もとうとう、
まったくできなくなってしまいます。

そこで親戚の医者が経営する病院の最上階に入院させられ、
外出を禁じられ、思考力を麻痺させる強い投薬を受けさせられます。
薬の量は段階的に増やされていきます。

治療に関しての本人の承諾もなにもあったものではなく、
医者からは、一族の恥、判断力や責任能力のない存在=精神病患者として扱われ、
このまま残りの人生を幽閉されることに危機感をいだき、脱走を企てます。

ことは首尾よく運んだものの、このままでは、ふたたび精神病院送りか、
さもなくば自殺しか道が残されていない。

自殺か精神病院か、瀬戸際ぎりぎりのところで、とりあえず、
入院させられる心配がない医者だから、という理由で精神分析医を選び、
相談に行きます。

治療を開始して、最初の面接、そのたった一回の治療で、
あれほど大勢の医者が首をひねった不正出血が、嘘のように
ピタリと止まってしまいます(!)。

『私』は心底驚きます。
ひょっとして精神分析のなかに答えがあるのではないかと期待を持ちます。
途中何度も迷い、疑いながらも、精神分析に真っ正面から取り組み続けます。

言葉を吐き出し、紡いでいく過程で、本当の自分を発見し、
不安神経症の症状は消えていきます。

『私』はやがて、自分の才能を見いだし、社会的に成功し、
それまで一族から無理矢理押しつけられた価値観でなく、
自分のための価値観にそって自然に生きられるようになります。

人間的にも成長し、家庭生活も完全に幸福なものに変わっていきます。

人生にたいしての自信と意欲を取り戻した『私』は、
七年にわたった精神分析治療に、自らピリオドを打ちます。

医者に感謝と別れを伝えた『私』は、胸一杯の喜びと希望を抱き、
精神分析医者の家を後にするのです。
 

『血と言葉――被精神分析者の手記』とはどんな本か

この本は、たくさんの側面をもっています。

まずひとつに、他では読めない、患者の目を通して見た、
優れた正統派精神分析の治療記録だということ。

また、社会のなかで「女である」意味を問うフェミニズムの啓蒙書でもあり、
母と娘の互いの存亡をかけた愛と憎しみの物語りでもあり、
不仲の両親のもとで生き抜いた子供の回顧録でもあります。

新興階級のフランス人・ブルジョア層の潤沢、贅沢、美、洗練、高い教養と知性、
それが作家のラテン気質の激情をもってつづってある文面は、
ひとつの印象的な絵画か映画でも鑑賞しているような豪華さです。
 

神経症を治すための頼みの綱だった精神分析

私はふだん、小説は、ほとんど興味がありません。

自分の急性で重い神経症をなんとかしたくて、なんとかせずにはいられないほど、
追い詰められて、医者は当てにならず、しかたなく、
心理学関連の本を読み尽くす勢いで毎日本屋さんに通っていたとき、
この本も最初から、心理学関連の書棚にありました。

しかし、小説という形をとっていたし、精神分析なんて私にはわからないので、
この本だけは長いこと敬遠していました。

でも、手にとってみてびっくりしたのが、ヒロインと私との共通点の多さでした。

出血の多さ、神経症の不安発作の強さ、ときどき起こる現実と同じ強さの幻覚、
両親の不仲と離婚、望まれない子供だったことなどなど……。

フランスやフランス人についてほとんど知らなかったので、
背後の社会情勢や、文化やニュアンスを理解するのには、
ちょっと手ごわい部分もありましたが、
そこよりも深い人間心理に共通な部分をつかもうと努力し、成功しました。

精神分析の現場が患者の側からわかる本はとても少ないので、
その一部なりともかいま見ることができたことは貴重なことです。

『血と言葉――被精神分析者の手記』は、私の自己分析の大きな助けとなりました。
   

 

記事>不安神経症の克服成功談『血と言葉』マリ・カルディナル
(2)不安神経症の心理療法(精神療法)治療成功実例/『血と言葉』のあらすじ


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No.4 不安神経症克服にむすびついた『血と言葉』と私の精神分析・カタルシス(2003-07-11)
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