子供の多重人格(解離性人格障害)の治療例(第91号 2006・11・21)

こんにちは。(^^) 平井 瑛子です。
今日は前置きなしにさっそく本題に入ります。 

世の中にはさまざまな理論がありますが、
事実にもとづいて書かれたものは、どんな学説よりも、
説得力があり、得るところも大きいと思います。

多重人格(解離性人格障害)の治療成功実例

最近、ある本を読み終えました。

『虐待家族の「仔(こ)」』 キャロル・スミス著 
古賀林幸訳 S・J・キングズベリー医学博士序文
虐待家族の「仔」

地味な見かけ(カバー)で損していますが、ドラマチックな展開もあり、
感動的な物語です。 

子育てを終えたあるアメリカ人女性が、ひとりの少年を里子として
引き取り、問題児だったこの子に大きな愛情と手間をかけ、
ピンチをそのつど聡明さで乗りこえ、忍耐強く育てながら、
この子の情緒的な問題・・多重人格(解離性人格障害)・・を
ひとつの人格に統合し、心を回復させていった記録です。

(破壊的なことばかりしている)僕は全然ダメだ!と、
自分への罰として家の壁に頭をガンガンぶつけているのを見て、
里親の女性はこの子を助けようと決意します。

里親の夫婦の慈愛と行き届いたセラピー(施術)や
トリートメント(対応・処置・治療)を受けられたという点で、
里子の少年はとても幸運でした。

むろん、この少年自身が、問題を引き起こしてばかりいる自分を
なんとか普通のまともな状態にしたい!という
強烈な願望があったということが大前提です。
本人に治りたいという気持ちがなくては、
どんなに治療者が尽力しても徒労に終わることでしょう。
   

少年期の多重人格(解離性人格障害)

通常、多重人格(解離性人格障害)は、
・女性がなりやすい
・子供にはない
と考えられていますが、そうでもなさそうです。

催眠療法で実際に少年の治療にあたり、人格の統合を促した
キングズベリー博士は、この本の序文でこのようにおっしゃっています。

若年男性の多重人格(解離性人格障害)患者がいないのは、
青年期の男性が多重人格(解離性人格障害)になった場合、
破壊的な行動が自分の体に向かう女性と違って、
衝動的に他者に向かって破壊的な行動に出るために、
犯罪者として刑務所に入れられ、精神的な患者とみなされないのだろう、と。
  

愛情深い母親と優秀な臨床家の役目を一人二役でこなした女性

『虐待家族の「仔」』 のなかで強く印象に残ったのが、
里親であり著者である「キャロル」の優秀さです。 

里子のアレックスを預かるにあたって、
回復させるためのセラピーについて勉強し、継続されたようですが、
もともとは、中学の『国語(英語)』の教師で、
四人の実子を育て上げたほかには、
臨床心理学の資格も、関連するキャリアもありませんでした。 

でも、アレックスが起こすさまざまな問題について、
そのつど正しい判断を下し、対処していったのです。
権威ある臨床家のキングズベリー博士が太鼓判を押すほど。

彼女は、理想の母親と、プロの臨床心理家とを、
同時に矛盾なく体現しています。 

アレックスのために、空手やダンスなどを習わせ、
気持ちを安定させ、従うことと適応することを教え、
自信をつけさせ、また、ふさわしい心の専門家を探し出して
アレックスを連れていきました。 

アレックスにたいして、ほんとうの母親のように、
いえ、ほんとうの母親以上の愛情と世話を与え続けました。

社会に適応するためにはどうふるまったらよいかなど、
生きるためのスキルも教えました。 

キャロルがやったことはそれじたいがセラピーだったのですが、
さらにアレックスの治療をすすめる助けになったのは、
特定の理論にかたよらない賢明なカウンセラー、ビル・コンティの
面接(カウンセリング)と、
優秀な精神科医キングズベリー博士の、特別な催眠法でした。
 

正しい心理療法と、間違った心理療法

催眠というと拒絶反応を起こす方も、メルマガの読者さんのなかに
いるかもしれませんが、キングズベリー博士の催眠法のポイントは、
間違ったセラピーでよくあるように、
× トラウマを掘り出し、
× 封印していた過去のつらい感情の嵐を増幅させ、
× 自分はこんなに傷つけられていたということを再確認させ、
× 新たに大きく深刻な傷をつくり、
× さらなる苦しみの穴に突き落としておいて、放置する
のではなく、当然、そうではなく(;^_^A 

催眠下で安全な自我の居場所を確立させ、
アレックス本人が、自分自身の解離状態を把握してコントロール
できるようにしたのです。 

その結果、アレックスは、フラッシュバックが起きても、
自己を見失わずにコントロールできるようになったのです。

キングズベリー博士の催眠療法は、アレックスの精神と心を安定させ、
現実の生活を送りやすくするのに非常に強力な助けになりました。
  

体の傷と心の傷とでは、回復のしかたが違う

虐待などの深刻なトラウマを抱えた心は、悲しみが幾重にも重なっています。

そのせいか、今、表に出ている問題がひとつ解決したと思うと、
他のより大きな問題がでてくることがめずらしくありません。

心と体は、長く無理を続けたり、環境が悪かったり、条件が重なると
病にかかる点では同じですし、休養や栄養補給、機能訓練
(リハビリテーション)的なことが有効であることも似ています。

でも、回復の過程として大きく違うところもあります。

たとえば、体の場合でいうと、
ひとりの人間が、たくさんの身体の怪我や病気を抱えているとき、
もっとも重くてつらい緊急度の高い症状が自覚されます。

それが手当てされて治ると、それまで感じなかった、
その次に重い症状が自覚されます。 

きっと、個体の命を救おうとする生存本能が働いているせいでしょうね。

心にも種の生存本能ははたらいています。

フロイトが定義した通り、『抑圧』も
『心の防衛機構(生存本能)』のひとつですが、
症状の重さと、感じる強さは、体とは正反対。

心理的な治療をはじめると、心のなかで一番重くてつらいことは
いちばん最後に出てくるのです。
そのタイミングは、それにかろうじて耐えられるまで強くなったときです。

もっともこれはきちんとした治療の場合です。

配慮のない治療者の場合、とくに催眠療法士などは、
退行催眠の能力を暴力的に使うこともあるようです。

上に「間違ったセラピー(治療)」として書いたように、
クライアントに配慮のないセラピストは、いきなり、
もっともつらかった体験と感情をたっぷり味わわせる。

トラウマを再現させたあと、
治療として肝心要の重要な段階へ進まないのです。

他人(クライアント)の心にメスを入れてほじくったあと、
元通りの状態に修復するための、適切な処理も、手当ても、
しない・できない・その能力がない・にもかかわらず。

つらい記憶(トラウマ)を本人にいきなり
まざまざと思い出させ、その暗い穴のなかに孤独なまま放置しておく。

お金をいただくのに、そんなことをして平気でいられるその神経が、
私にはわかりません。

本人がまだ対応できないうちにトラウマ記憶に直面させるのは、
治療などではありません。キングズベリー博士はこれを、
「治療家による第二の虐待」と呼んでいます。

第一の(最初の)虐待を多くの場合、育ての親から受けて、
治療者から第二の虐待をお金を払って受けるなんて、
弱り目に祟り目。

こうなると治療は治療ではなくとんだ災難になってしまいます。
 

心の病の治療はタマネギの皮をむくよう・・・

「心の回復の過程は、タマネギの皮をむくのと似ている」といわれます。

目にしみる刺激に泣きながら、なんとかしようと中心に向かっていく。
ひとつの問題が解決すると、より奥にあった問題が出てくる。
回復していくほど、問題が核心にせまるほど、深い階層に押し込んでいた
より深い心の傷があらわれてくる。

自分をコントロールできるようになったアレックスは、
今度は自分の別人格の姿を目撃するようになります。

キングズベリー博士は、アレックスに言います。

「まず理解してほしいのは、きみは異常ではないってことだ」
「それどころか、きみが耐えがたい心の傷に対処できる
人格をつくろうとしてきたのは、とても正常で、利口なことだったんだよ」

そして、別の人格と話し合い、コミニュケーションをとるように勧めます。

私は以前、自分が同じようなことをやっていたのを思い出しました。

『プライベート・アイズ』に詳細が書いてありますが、
別の人格というほどではないのですが、過去の事情について、
当時の28歳の私よりもくわしく知っている存在と接触したことがあります。

不安神経症のひとつ、激しいパニック発作を克服するための貴重な情報と、
ヒントを、この存在はもたらしてくれました。


ある人の精神状態が異常になるというのは、たいてい、それに先立って
過ごしてきた時間と環境のほうが異常なのです。

考えることも抵抗することも不可能な、あまりに理不尽な環境に置かれ、
本来であれば落ち着いてまとまっているはずのひとつの人格を、
無理な環境に無理に合せて、自己の内面を大きく引き裂いてでも、
その場をなんとかしのいで生きるしかない、そんな過酷な場所も、
この世にはあるのです。

国とか、都市部か農村とか、階級や所得の階層とかにも関係がなく・・・。
 

統合のための催眠治療

私が自分の『治療』に、もうあとがない背水の陣で挑戦していた当時、
これが「催眠法の治療」だとは思っていませんでした。

どんな専門書を見ても、キングズベリー博士や私のようなやり方は
どこにも、たったの一行も、わずかな単語も載っておらず、手がかりは
まったくなかったのですから。

この『虐待家族の「仔」』でキングズベリー博士のやり方を知って、
やっと、これもれっきとした、しかも効果がある治療なのだと確認でき、
とてもほっとしました。

なお、私は多くの専門的な知識をギュウギュウに詰め込み、
おそらく多少の素養もあったので、成功したのだと思います。

この文章だけを読んで自己流で試すことはどうかお止めください。

無料メルマガとはいえ、情報源としての責任はあると考えていますので、
誰かに悪用されたり、間違って利用して危険な状態に陥ることを避けるため、
使えないように、わざとレベルをかなり落として大雑把にお話ししています。

治療という名がつくものは、誤ったやり方をすれば失敗に終わり、
失敗だけならまだしも、新たな傷を残したり別なトラブルに発展したりと、
かなり危険です。
 

心が病む・回復するメカニズム(機構)は万人共通

もちろん、『プライベート・アイズ』を受講される方のなかには、
多重人格障害の方はいらっしゃいません。

私も解離状態に近いことはあっても、多重人格障害にまでは、
なったことがありません。 

でも、ほんとうのありのままの自分に想像もつかず、
自信を失っていて、漠然とした不安をコントロールできなかったり、
生きづらさや不安を抱えて、どうしたらよいのかわからないでいることや、

自分の心の癖(習慣)は、自分にとって好ましいものではなく、
むしろ生活のなかで邪魔になっているのに、変えようとしても変えられない、
自分はどこかおかしいのか?どこか何かを間違っているのか?と
自分だけがこんな苦しみを抱えているのか?と、
思い悩んでいたという点で、アレックスの苦しみは、
かつての若かった頃の私自身をはじめ、
生きづらさを抱えていた方々と、
通常考えられているほどの大きな開きはないと思います。

・・・とはいえ、アレックスの幼児期・小児期、繰り返し加えられた
性的・肉体的な暴行は、人間が耐えられる限界を超えていました。

そうしなければ殺すと脅され、その場で強制された残忍な行為を自ら行い、
強い罪悪感とショックを乗り越えて生き延びるために、
彼は違う人格をつくりだしたのです。

もし逆に、虐待がここまでひどくなければ、アレックスは、
生き延びるために多重人格障害になる「必要」もなかった、といえます。 

同じことは、神経症(不安障害・ノイローゼ)になっている方にも、
言えるのです。 

人間の心のしくみは、まずその人間を生き延びさせること、
環境に対応させることを最優先にします。

心がいかに不自然な状態まで変容しようと、まず生命を優先させます。
肉体を保ち、この世にとどめることが先で、他のことは後回しです。

受けた心の傷は、状況が安全になってから、
PTSD等の形で現れます。

この心のしくみは、潜在意識と呼びかえることもできます。
  

PTSDがある人は、自己催眠ができる

キングズベリー博士は『虐待家族の「仔」』序文4ぺージで、
こう述べています。 

「多重人格者をはじめPTSD(心的外傷後ストレス障害)のような
心理的外傷の患者は、ほぼ全員が催眠誘導にかかりやすく、たちどこ
ろに深い催眠状態に入ることができる」

・・・となれば、意識できないほど心に深い傷を負い、それを処理で
きずに苦しんでいる人にとって、催眠法はとても適しているわけです。
  

困難で危険をともなう心の治療と解決策

・・それにしても、他の先生の治療法を勉強すればするほど、

他の人の心が治癒に向かうのを助ける、平たくいうと、治療する過程で、
ひとつも副作用をおこさせず、新たな心の傷、トラウマをつくらず、
他の症状にも転化させず、しかも短期間のうちに、後戻りもせず、
そして、進んできた過程をあとで自分でも振り返り把握できるように、
今後の人生への自信と糧となるように、次に何か起こったときにも、
そのひとつひとつの克服の経験を引きだして役立てられるように……、

これらすべての条件を同時に全部満たしながら、人様の心を健康にしていく
手伝いをすることは、並大抵のことではないのだと、私自身、
わかってきました。

自分自身がそれをできるというか、私でさえしているくらいだから、
治療家と名のつく人なら誰でも当然そのようにしているのだとばかり
思っていたのです。でも現実問題として、多くの先生は、そこまで
厳しい責務を自分に課してはいらっしゃらないような印象です。。。 

私の場合、誰か他の人から教わったのではなく、自分の必要性に応じて
セラピーを直接自分の手で施していった経験があります。

また、苦しかったときのことも、「治療」を施していったときのことも、
当時の記憶と感情をいつでも取り出せるように処理もしました。 

そのため、健康な今でも、昔の私のように、憂鬱や不安の悩みを抱えている
方の心情を、外側から想像したり、知識として「勉強」したのではなく、
内側から手に取るように理解できます。

自分が何気なくただ、成果があるからというだけの理由でやっていたことが、
キングズベリー博士の催眠法と、その考え方と進め方がよく似ていたことは、
この『虐待家族の「仔」』からの大きな収穫でした。 

意外にも高度なテクニックだったのですね。 

これで、なぜ、『プライベート・アイズ』http://hiraiyoko.com/nh.html
を受講された方のなかで、以前にカウンセリングや、いろんなセラピーを数多く
受けてこられた方ほど、内容のレベルの高さに驚かれ喜んでくださるのかが、
やっとわかりました。

『プライベート・アイズ』セミナー
http://hiraiyoko.com/nh.html
 

心の治療と回復に絶対不可欠なのは、安全な場所

『虐待家族の「仔」』の原題は
 "The Magic Castle"  = 魔法の城、です。

この本は、子供時代から青少年期に移ろう時代の心の回復記録ですし、それにふさわしい、いいタイトルだと思います。私も自分の経験から、心の治療には、心の中に堅牢な砦(とりで)のような場所が必要だと理解しています。
 

備考 今回の記事についての注意事項

★『虐待家族の「仔」』についての注意

『虐待家族の「仔」』のなかには、アレックスのPTSDの苦しみを
表現するために、必要最低限の範囲内で、カルト集団の悪魔崇拝の残酷な
儀式などの描写があります。

★催眠療法がそのまま多重人格(解離性障害)を治せるわけではありません

私が知る限りでは、ヒプノセラピストの多くは、精神科に通うまでに
心身が疲れている人には対応ができないようです。

同じ器具を使っても腕のいい歯医者さんとヤブがいるように、
催眠療法の看板を掲げていてもいろんな先生がいます。

催眠療法で、かつ、キングズベリー博士のようなスキルがある方は、
おそらく日本ではあまりいないと思います。

★『プライベート・アイズ』のスキルは、催眠法だけではありません。
『プライベート・アイズ』テキストには、催眠法が向かない方にも、
役立つたくさんのメニューがあります。
  

虐待を受けた子供への接し方

子供の健全な発達・発育には、大人(親)から関心を寄せられ、
身体を抱いてもらうことが欠かせません。

ネグレクト(放置・無視など)を受け続けた子は、自己主張をしません。

おとなしく声を出さずに気配を隠してそこにたたずんでいて、
「いるかいないかわからない」と言われることが多いのです。

(私もそうでした。そしてそれは自分の性格だと思っていました・・)

また、内面の不安は、じっと座っていられない多動や、
自律神経失調症として現れることもあります。

でも、セラピーの例が載っているこの本のなかで印象的だったことは
他にももっとたくさんあります。

性的虐待を受けていた女の子にたいしてのアプローチにも、
理性的な判断と、行き届いた細やかな配慮と、語りかけの適切さがあります。

専門的な用語などを使わず、わかりやすく具体的に書かれているので、
セラピストが治療にやってきた子供にどう接すればよいかというだけでなく、
(大人に傷つけられているかもしれない)子供を
温かくサポートして支えになってあげたり、
大人への気持ちを汲み取ってあげるためにも役立ちます。

虐待を受けた子どものプレイセラピー

…………………………………………………………………………………
●編集後記 
…………………………………………………………………………………

ようやくというか、初冬らしく寒くなってきました。
ご自愛ください。 

……………………………………………………………………………………………
●お願い・注意事項
……………………………………………………………………………………………

●お友だち・お知り合いへの全文転送は大歓迎です。
心の不安を抱えた方、心の健康に興味がある方に教えてあげてください。

●お寄せいただいたメールは、ご本人に確認することなく、
個人が特定できないよう配慮したうえで、掲載される場合があります。

●転載・引用される場合は、出典として、このメルマガのタイトルとURL
http://hiraiyoko.com/seminar.html あるいは、各メルマガ配信サイト 
http://www.mag2.com/m/0000113055.htm などを必ずそえてください。

……………………………………………………………………………………………
●奥付
……………………………………………………………………………………………
メールマガジン:本当の自分がわかる心の技術〜安らぎと治癒の自己改革〜
発行責任者:グリーニング・ランド 平井 瑛子(ひらい・ようこ)
ホームページ http://hiraiyoko.com/
……………………………………………………………………………………………


<前>通信講座で子供時代と前世の心の傷を癒す方法(第90号 2006・10・17)
<次>『プライベート・アイズ』は何に有効か(第92号 2006・12・20)
<精神分析と心理学と精神療法(心理療法)のメルマガバックナンバー一覧>

憂鬱(うつ)と不安を解消するセルフコントロールHPトップ

講師兼セラピスト(女性)の自己紹介

潜在意識と心の自己改革系無料メールマガジン

やさしい心理学通信講座(セミナー)

心理学と心理療法の本棚

心の健康についての記事

メンタルヘルスのリンク