精神療法(心理療法)についてアリス・ミラーの結論と平井の仮説(71号 2005・6・29)

平井です。
今日もメール開封してくださってありがとうございます。(^^)  

ではでは、さっそくいってみましょー。

前号より続き。。。

原初療法(プライマリーセラピー)についてメルマガを書くために
ネットで調べてみたら、こんなぺージを見つけました。

アリス・ミラー博士の公式ウェブサイトのなかの、このぺージです。

……………………………………………………………………………………………

http://www.alice-miller.com/articles_en.php?lang=en&nid=44&grp=11

 原初療法(初源療法・プライマリーセラピー)ついての重要(または懸念)事項
   ”Concerning Primal Self-Therapy (June 2001)”

……………………………………………………………………………………………

アリス・ミラー博士はここでも、過去にご自身が太鼓判を押した
「シュテットバーハー博士のひとりで行う原初療法」にたいして、
以前の評価と称賛を取り下げて、専門家の指導監督のもとで行うようにと警告しています。

一人でやるプライマリーセラピー(原初療法)にたいして、どうして最初は大賛成したのか、
アリス・ミラー博士はご自身を振り返り、こう述べています。

------------------------------------------------------------
As I had never had the luck to be understood and helped in my childhood
nor in my therapies (it was always me who had to help others) I found
the idea of a primal self - therapy at first quite normal and acceptable.

「私は自分の子供時代についても自分の療法についても、今までに一度も、
理解してもらったり、助けてもらったりしたことはありませんでした。
私はいつも(助けられるのではなく)他者を助けなければいけない立場にあったからです。
そのため、プライマルセルプセラピーは、最初のうち、とても受け入れやすい
提案に思われたのです」

(★ 平井です。翻訳は私がしました。誤訳や指摘などありましたらお願いします。)


------------------------------------------------------------

つまり、アリス・ミラー博士は、子ども時代からいつも他者を助ける側にいて、
自分の問題はひとりで解決しなければならない立場にあったので、
単独で自身を治療するというのは、とてもノーマルですんなり受け入れられる
アイデア(提案)だった、というのです。

――このぺージの翻訳を続けます。

------------------------------------------------------------

しかし、何年かたってから、私は理解したのです。
心の回復の過程において、物事に明るく事情に通じており、
感情を完全に理解してくれるセラピストの存在の重要性だけではなく、
必要性を。

(原文)It is after some years that I grasped the big importance and even
necessity of an enlightened and empathic therapist in the process of recovery.

それは特に、自分自身を救い出すのに失敗した人々からの手紙のおかげです。
その方々は自分自身を責めています。
自分がこのような苦境、つまり、不安と苦痛のなかで、ひとりぼっちで懸命にセラピーを
何度も何度も繰り返し試みる状態―に陥ったことで。

Especially thanks to letters of people that failed to help themselves
and who blamed themselves for their plight ( trying to do more and more
therapy and turning around alone with their fears and pains)

それゆえ、私は理解することができたのです。
プライマル・セルフ・セラピーは、じつに簡単に古く鬱積した感情を誘発しますが、
それは、子供(時代)に、その人がいつも孤独で、痛みと恐れを抱えていた状況を
復活させてしまうことにつながるのだと。

that I understood that the primal self - therapy can indeed trigger easily
the old pent-up emotions but can reactivate the situation of the child
that was always alone with his/her pains and fears.

このような古いトラウマ(心的外傷)の繰り返しは、セラピー(治療)とは正反対のものです。

This repetition of the old trauma is the opposite of a therapy.

今日(こんにち)、私はアーサー・ヤノフ氏と意見を共有しています。
彼はこう断言しています。
知識があって事情に通じており、慈悲深いセラピストの助力なしに行う
プライマリー・セルフ・セラピーはとても危険なものになりうると。

Today, I share the opinion of Arthur Janov who always affirmed, that
primal therapy without the assistance of a well informed and compassionate
therapist can be very dangerous. (cf. his homepage).

くわえて、以下もそれ(プライマリー・セルフ・セラピー)に含まれると思います。
(1)その人がそこから抜け出たいと願っている状況を復活(再現)させる矛盾。
(2)永続的な暴力が個人に向けられること。

※ 平井です。(^^) 。私が考えるに、アリス・ミラー博士はたぶん、トラウマの被害者が
ひとりで原初療法を行うと、ただいたずらにその人のトラウマを再現させ、
感情の渦のなかに繰り返し投げ込む状態になる危険性をさしているのだと思います。

In addition, I think that it contains (1) a contradiction in itself
by reactivating a situation of which one want to get rid of and
(2) a perpetuation of the violence directed toward oneself.

私はシュテットバッハー博士のメソッドを推薦するのをやめた1994年から
彼とは連絡をとっていませんが、こんなふうに推測をしています。

この治療法の副作用についての情報が彼にも届いていることでしょう。
それが、この治療を勧めることを彼に控えさせることになっているのではないかと。

I don't have any contact with Mister Stettbacher since 1994 when I stopped
to recommend his method but I suppose that the information on its negative
effects reached him too and that it already motivated him to stop recommending it.

彼が本を出してから、この論題についての役に立つ新しい知識がたくさんでています。
これらに簡単にアクセスできるのはインター・ネットがあるおかげです。

Since the release of his book there is a lot of new information on this
topic available that are easily accessible thanks to the internet.

おそらく、シュテットバッハー氏が次に書く本では、今現在残されている著作
―12年も前に出版された― にたいして、修正を加える必要があるでしょう。

Maybe, a next book by Stettbacher will bring the necessary corrections
to his present work, published 12 years ago.

------------------------------------------------------------

アリス・ミラー博士はこのように、自らのウェブサイトのぺージで、
かつて熱烈に推薦したシュテットバーハー博士提唱の
「ひとりでできる心理療法(原初療法)マニュアル本」にたいして、
以前とは意見を翻し、
「セラピーとは正反対のものになる危険がある」と指摘し、
この治療に関心を寄せてこれから試してみようとしている男性に向かって、
ひとりではやらないようにと注意しています。

このウェブサイトのページと同じ時期、2001年に発表された著作
『闇からの目覚め 虐待の連鎖を断つ』では、こう述べています。

「どんな心理療法がよいのですか?」という質問にたいして、
アリス・ミラー博士は二つのポイントをあげて返事しています。

・良い心理療法家(治療者)とめぐり会うこと。
・よい心理療法家とは、患者のなかに生じてくる子供時代の感情を
 否定せずに付き添ってくれ、患者が問題を乗りこえるための力を
 貸してくれる存在であるということ。  

 

『才能ある子のドラマ』に違和感を抱いたナゾが解けた!

さて、皆さん、い〜ですかぁ〜?

ここで、第67号の謎解きです。

私がアリス・ミラー博士の第一作『才能ある子のドラマ』を読んだとき、
うまく形容できない違和感をもち、その理由がわからなかったと、
このシリーズの最初に書いたのを覚えていますか? 

アリス・ミラー博士が本のなかで言っていることは素晴しいと思ったし、
他の心理学者がほとんど興味や関心を寄せない子供の気持ちに寄り添っているし、
子供の心を大切にする精神分析なんて、それまで一度も読んだことがなく、
とても嬉しかった、にもかかわらず……、
なぜか、感覚的には完全に拒絶されているような、この矛盾……。

   おかしいなぁ……?と、首を傾げて、あれこれ思案していたのを。

「なんだろう?
精神分析家の論説はいつもこんな調子でそれが当たり前なのか?
客観的に論旨を展開しているだけなのか?
私が素人だから理解が足りないのか?」

とも考えたりしてみましたが、
こうやってアリス・ミラーの著書を、発表された順に考察してみると、
その違和感の理由がはっきりしました。

この『才能ある子のドラマ』を書いていた頃のアリス・ミラー博士は、
従ってきた精神分析の理論(子供時代の性的トラウマ談は患者の大ウソだという説)と、
個人的に臨床その他の体験から得た、子供の体験や感情についての考えとが、
互いに相いれなくて、どっちつかずの状態にあったと思われます。

第一作を書いたときの博士は、虐(しいた)げられている子供の感情を理解し、
支持するという、とても進歩的で革新的な考え方をしていて、それが固まりつつありました。
が、その一方では、自分が長いこと属していた精神分析の流派、
フロイト派の考え方からすぐには離れることができませんでした。

どういうことかというと……、
ズバリ端的に言い切ってしまえば、フロイトが残した論説は、
子供への偏見と無理解がありました。

大人が子供に悪さをするはずがないという前提のもと、
不都合なことは子供のせいにされたのです。

神経症(不安障害・ノイローゼ)に苦しむかつての子供に対して、
親やあらゆる大人に非はないと、すべて大人を正当化するものでした。

フロイトが世に認められた『幼児性欲』理論は、大人の利益を守るものでした。
( フロイトも人間ですので、社会に受け入れられる論説でなければ、
世間に受け入れられ成功し、名を馳せたりすることもできなかったでしょう。 )

当時の社会では、共通認識として
「親はいかなる場合でも子供にたいして絶対に正しい。
間違わない。悪くない」  と信じられていました。
それに対立する意見は主張できなかったのです。

しかし、アリス・ミラー博士は、子供時代に親から苦しめられる子がいるということは、
自分の経験からしても、またたくさんの博士の患者の例をみても、歴然とした事実だと
はっきりと主張したのです。

ミラー博士は、親から虐待を受けた子供がいること、
それがトラウマとなって大人となったその人を苦しめるということを、
表立って社会に向かって申し立てた、子供の権利運動の代表者として草分け的な存在です。
その分、マスコミからもかなりバッシングを受けたり苦労されたようです。

かたや、ミラー博士が教えを守ってきたフロイト派の精神分析の考え(理論)では、
神経症(不安障害・ノイローゼ)などの心の病を抱えた人のなかの、
子供時代の苦しみにはまったく取り合おうとしません。

フロイト派の考えは、平たく言えばこんな感じです。

「神経症(不安障害・ノイローゼ)や心の病になっている人間は、
子供時代に親に対して認知の歪みがあった。
親からされてもいないことをされたと間違って記憶している。

神経症(不安障害・ノイローゼ)患者は、子供時代に大人にたいして、
憧れやセックスへの願望をもち、それを実際にあったと勘違いして覚えている。
それが、神経症(不安障害・ノイローゼ)の原因だ。
神経症(不安障害・ノイローゼ)の症状は、その幻想が形を変えて表出しているのだ」

ということで、もう一方的に大人の味方なのです。

だから、ミラー博士は、自分が属するフロイト派の精神分析理論と、
体験的に知ってきた真実とのギャップに苦しんだに違いありません。

『禁じられた知』で精神分析に別れを告げてから、
ではいったいどんな治療法がよいのかを問われて、やっと自分でできる治療法を見つけた!
という感じで喜んだのが、
『こころの傷は必ず癒える 抑圧された子供時代に向き合う療法』だっだのです。

推薦の言葉として、アリス・ミラー博士は、
「私は大学を卒業して精神分析を勉強して、自分ばかりでなく患者さんも
道を踏み迷うことになった」と、精神分析の弊害と反省を述べ、
「ひとりでできる原初療法」を今まで世界中からたくさんもらった質問への答えだと、
やや興奮気味に言っています。 

しかし、その後この治療法の限界と危険性を知り、
アーサー・ヤノフ博士が主張しているように、
トラウマの再現は、事情をよく知っていて患者を支えてくれ、
苦境から出るのを助けてくれる治療家のもとで行うべきである
という結論に達したのです。
 

『身体はウソをつかない』

2005年6月現在のアリス・ミラー博士の新刊は、この春に英訳された
『The Body Never Lies - The lingering effects of cruel parenting 
身体はけっして嘘をつかない―残酷なしつけのなごり(平井訳)』というものです。

体は嘘をつかない、これはその通りです。

平井も、まさか、頭ではなくて、体が何かを知っている、とか、
体がそれ独自の手段を使って何かを(発作や反応や症状として)表現する、
などということは、
精神分析を試すまでは考えてもみたことがありませんでした。

これは別に怪奇現象でもなく、誰にでもその記憶は普通にあり、
呼び覚ますことができます。

あ、もちろんこれは、アリス・ミラー博士がおっしゃっているように、それが
辛い記憶であった場合は、ただたんに、
過去の苦しい記憶を呼び覚ませばいいというわけではありません。

よき治療者の精神的な付き添いがあるべき。一人で行なう場合は、
その感情のコントロール方法をあらかじめマスターしている必要があります。
その点はご注意なさってくださいね。


心が癒されるための十分条件

今回、アリス・ミラー博士の本を発行年順に連続して読んでみて、
私はあらためて、17年も前に自分が立てた仮説が正しかったと思いました。

心の傷と回復について、知識や経験と理解ある存在が、
神経症(不安障害・ノイローゼ)などの心の病の治癒には不可欠であるということです。

私はアリス・ミラー博士とちがってそのような存在はいませんでしたが、
自らのなかに、そのようなパーソナリティーをイメージしながら、
精神療法(心理療法)を行い続けました。

当時どんな専門書にも、患者にも理解や承認・愛情のようなものが必要だとは、
まったく書かかれていませんでした。

しかし、そういう無形の支えが不可欠であることは身に沁みていたのです。
それがなければ、有効な精神療法(精神分析)にはならないと考えていました。

昭和の終わりに自分が立てた精神療法(心理療法)についての仮説が、
アリス・ミラー博士が紆余曲折ののちに到達した意見と同じであることを知り、
あまりに簡単すぎて見過ごされるようなことが、じつは重要で、
それゆえ、顕著な効果が、自分の神経症(不安障害・ノイローゼ)にも現れたし、
それをもとにさらに改良・汎用化した
『プライベート・アイズ』セミナー
受けた方にも出たのだと、確認できました。


 

               アリス・ミラーと心理療法   完 

アリス・ミラーの著作

アリス・ミラー博士の翻訳本(数字は原著が発行された年号です)

1.1979年:才能ある子のドラマ アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/8zjpz

2.1980年:魂の殺人 親は子どもに何をしたか アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/8bayq

3.1981年:禁じられた知 精神分析と子どもの真実 アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/9m2cb

4.1985年:「こども」の絵 成人女性の絵画が語るある子ども時代 アリス・ミラー
http://tinyurl.com/db5n4

5.1988年:真実をとく鍵 作品がうつしだす幼児体験 アリス・ミラー
http://tinyurl.com/8vcy4

6.1988年:―本邦未刊―(仮題:呪われた知)アリス・ミラー

7.1990年:沈黙の壁を打ち砕く 子どもの魂を殺さないために アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/dc8e9 

8.1998年:子ども時代の扉をひらく 七つの物語 アリス・ミラー
http://tinyurl.com/avxgv  

9.2001年:闇からの目覚め 虐待の連鎖を断つ アリス・ミラー
http://tinyurl.com/7rteb 

■アリス・ミラー博士がかつて熱烈に賛美し、読者に推奨した本

こころの傷は必ず癒える 抑圧された子供時代に向き合う療法 
J.K.シュテットバッハー
http://tinyurl.com/ag9p8

………………………………………………………………………………………

……………………………………………………………………………………………
●編集後記
……………………………………………………………………………………………

あの悪名高いヒットラーは、子供時代に父親から日常的に受けていて、しかも誰も助
けてくれず、その残酷なしうちを理想的な行いとして嬉々として受け入れなければな
らなりませんでした。 

親への怒りと憎しみとを抑圧し内在化させたヒットラーは、成長し、やがて、当時世
界的に差別と偏見を受けていたユダヤ人にたいし、ヒットラー自身も気がつかないで
抑圧している激しい感情のはけ口を見いだしていきます。その過程がアリス・ミラー
博士の『魂の殺人』にはくわしく書いてあります。

こういう本を英語でなく、ドイツ語で、ドイツで出版したアリス・ミラー博士っ
て……いったいなにじん?

そう思って調べてみたところ、ポーランド系スイス人でした。

ポーランドはナチスの支配下にあった国です。

それはちょうど、韓国人や中国人が、日本語で、しかも日本で、『日本人はなぜ、国
をあげて戦争に熱狂し植民地支配に走ったか?』という本を出して、日本国内でベスト
セラーとなり、以後も長く売れ続けるような感じになると思います。  

天皇陛下と皇后がサイパンを慰霊のために訪れたのは、いいニュースでした。

先の戦争は「天皇陛下のためにすべてを捧げ尽くす」というのがひとつの名目でした
から、戦後60年も過ぎて、当事者はとうの昔に世を去っていますが、それでも、小
泉総理が靖国神社に固執?しているいっぽうで、国家間の緊張をやわらげる役目も大
きかったと思います。 

日本のかつての同盟国ドイツは何度でも、あやまちを詫びる用意があるそうです。

しかし、戦争に勝ったアメリカやイギリスやフランスからは、原爆で民間人を大量虐
殺したり、アフリカの植民地解放運動を非人道的なやり方で徹底的に制圧したりした
ことにたいしての反省の言葉は、聞こえてきません……。

やっぱり勝てば官軍・力が正義・ってとこ……なのかな?w(^_^)?


毎日ちょっとずつ増えていた読者さんですが、28日の夜、いっきに10人減ってま
した。(;^_^A

まあ、ちゃんと読んで下さっている証拠と喜ぶべきかな?(笑) メールボックスに
届いても読まれていないメルマガもけっこう多いという話ですので。


それにしても、アリス・ミラー博士の記事は、メルマガの文章におとすのに苦労しま
した。複雑で手ごわくて、眉間にだんだんとシワがよってきました。(笑)

深刻な話題がやっと終わりましたので、次回のテーマは、虐待とは無関係の、肩がこ
らないお気楽で開放的なものにします。(@^_^@)

暑い日が続きますが、ご自愛ください。(^-^)ノ~~ 


<前>精神分析の欠点・プライマリーセルフセラピーの短所(70号 2005・6・22)
<次>プラアイ受講生MMさん「ご飯が食べられるようになった」(72号 2005・7・10)
<精神分析と心理学のメルマガバックナンバー一覧>

憂鬱(うつ)と不安を解消するセルフコントロールHPトップ

講師兼セラピスト(女性)の自己紹介

潜在意識と心の自己改革系無料メールマガジン

やさしい心理学通信講座(セミナー)

心理学と心理療法の本棚

心の健康についての記事

メンタルヘルスのリンク