精神分析の欠点・プライマリーセルフセラピーの短所(70号 2005・6・22)

平井です。いつもお世話さまです。
今回もメール開封してくださってありがとうございます。(^^)  

シリーズ(連続)でお送りしている「アリス・ミラーと心理療法」ですが、
今日もさっそくいってみまひょ〜。

アリス・ミラーと原初療法(プライマリーセラピー)その5

コンラート・シュテットバッハー博士の1990年発行の原初療法のセルプヘルプブック、
『こころの傷は必ず癒える 抑圧された子ども時代に向きあう療法』に最大の賛辞を寄せ、
同時に刊行されたご自分の本『沈黙の壁を打ち砕く』のなかでもとりあげて、
コンラート博士のやり方を絶讃していたアリス・ミラー博士でしたが……、

次作、1998年出版の『子ども時代の扉をひらく 七つの物語(アリス・ミラー著)』
のなかでは、一人で行なう原初療法にたいして、やや冷やかな視線を注いでいて、
明らかに心境が大きく変化したことが見て取れます。

この『子ども時代の扉をひらく 七つの物語(アリス・ミラー)』のなかで、
アリス・ミラー博士がどんな意見を述べているのか、ちょっと見てみましょう。

アリス・ミラー著『子ども時代の扉をひらく』

「省察 1 独裁者や教祖はどう機能するか」の章より抜粋〜 

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 ジークムント・フロイト、そして最近ではアーサー・ヤノフがかき立てた希望、
すなわち精神的外傷を生じさせた状況を思い出し、意識的に再体験することで、
持続的な回復がもたらされるのではないかという希望は、
残念ながら完全にうまくいくとはいえません。(227ページ)

 二〇年ほど前に開発された初源療法のやりかたの中には、時として有害であることが
明らかになったものさえあります。そのようなやりかたは、今日までに、ほとんど
用いられなくなってきています。

 たとえば、療法を短い時間に集中しておこなうとか、療法に用いる部屋の照明を
暗くするなどといった方法を使わないことに決めた療法家の数は、
すでにかなり多数に上ります。

 そのような療法家のほとんどは、そのような手段を用いずとも、
患者が自分の感情を感じとれるようにすることはできると考えているのです。
(228ページ)
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引用終わり

平井としては、フロイトの提唱した精神分析の理論や手法は、ところどころ
噴飯ものというか(;^_^A 奇妙キテレツだったり、偏屈?な部分もありますが、
全体的に見れば他では得られない良さがいくつもあり、優れたものだと思っています。

誰の言葉だったか、名前は記憶していないのですが、
「フロイトを批判する者は、フロイトの肩に乗っている。
フロイトの肩に乗って、世界が以前よりよく見えるようになったからこそ
批難もできるようになったのだ」という意味のことを言いました。
言いえて妙だと思います。(@^_^@) 

現在行なわれているさまざまな心理療法もその原点を遡れば、その大部分が
フロイトの精神分析にたどりつくと言われています。
潜在意識の発見という偉大な業績を残したフロイト。
フロイト関連の本は何度読んでも飽きないですし、そのつど新たな発見があります。


フロイト派の精神分析の大きな欠点とは

ただ、残念なのは、フロイトが周囲のプレッシャーに負けて、最初に発表した
誘惑理論→「ヒステリー(身体が麻痺する神経症<不安障害・ノイローゼ>)の患者は、
かつて子供時代に性的虐待を受けてそれがトラウマ(心的外傷)になり
神経症(不安障害・ノイローゼ)になった」という説を、
大きく曲げざるを得なかったことです。

フロイトが自説に大幅に修正を加えて次に発表したのが幼児性欲理論でした。

「多くのヒステリー患者が語る子供時代の性的な話は、
すべてつくりごと、虚偽である。身近な大人(親、きょうだい、親戚など)からの
性的な虐待などありはしなかったのだ。それは大人に憧れ、片思いしている子供の
夢想に過ぎず、それを現実にあったことだと錯覚し、事実だと主張するために、
神経症(不安障害・ノイローゼ)の原因になっているのだ」と、
病気の原因をすべて子供の責任に帰してしまったのです。

アリス・ミラーが指摘しているように、現代に残っているフロイト派の
精神分析の大きな欠点はここだと思います。

アリス・ミラーは、このあとに続く文章で、
「しかしそのフロイト派の精神分析療法においても、子供の性的虐待について
以前とは認識が変わってきている」ことをつけくわえています。

そして、以下の文章にみられるように、原初療法(プライム・セラピー)についても、
適切な修正が加えられるべきだと述べています。 

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「初源療法も、精神分析と同様の傾向になることが期待されます。
初源療法のやり方にはすぐれたものもありますから、よくない面
―この療法のもつ限界や、重大な危険性―を明確に認識するようになれば、
よい点を利用することはできるかもしれません」
(228ページ・アリス・ミラー『子ども時代の扉をひらく』) 
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★ちなみに、アリス・ミラー博士は、精神分析に見切りをつけてしまって、
『元精神分析家』と言われることにさえ抵抗があるようです。

が、しかしミラー博士自身が書いたこの本
『闇からの目覚め 虐待の連鎖を断つ』の中にさえも、よい精神分析家と出会って
助けられた人が、精神分析に感謝の言葉を述べている具体例が二つも載っています。
(スイスでは、精神分析療法が今でも比較的さかんに行なわれているようです)

それにしても、アリス・ミラー博士の原初療法にたいする意見は、
最初のプロゥ(賛成)から、どうしてこんなにも180度方向転換してしまったのでしょうか?

その答えは、ここにありました。


アリス・ミラーが指摘するプライマリー(セルフ)セラピーの長所と欠点

ミラー博士は、原著2001年発行の『闇からの目覚め 虐待の連鎖を断つ』で、
ご自身の気持ちが変わっていったことを認め、その心情を吐露していますので、
少し長い引用ですが、ご紹介します。

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長い間私は、自分の子ども時代と向き合い、取り組むのは、
立ち会ってくれる人なしでも可能だと思っていました。私自身、その方法を
一人で探さざるを得なかったからです。絵を描くことと、文章を書くことによって、
なんとかその道を発見できたのですが。(以上25ぺージより)

その後私は初源療法によって幼い頃のことを明らかにしようとしてみましたが、
やはりうまくいきませんでした。

確かにたくさん、幼い子ども時代の感情を発見することはできたのです。
けれども、幼い時代の完全な文脈を発見し、当時の現実をそれとして把握し、
真実を認めることはできませんでした。
それは、当時私には共感をもって付き添ってくれる証人がいなかったからです。

いまの私なら、軽々にこのようなやり方を試したりしないよう、どんな方にも
忠告するでしょう。間違いなく信用できる専門家がついてくれるのであればよいのですが、
多くの場合、思いやりのある証人と称している人たちは、患者さんに強烈な感情を
起こさせることは間違いなくできるけれど、そのために患者さんが混乱に陥っても、
そこから出る手伝いはできないのです。(以上138ページより)

けれども、その後幸いにも、一人の事情を弁えている証人に会うことができ、
その人の温かい付き添いを得てようやく、私一人では決して耐えられなかったであろう
真実に向き合うことができるようになったのです。

この体験によってやっと、身体と情意の教えてくれることを百パーセントまじめに
受け取り、そんなことがあるかしらと疑い続けずにすむようになりました。

心理療法家が自分自身で自分の子ども時代と向き合い、問題と取り組む経験を
経ている場合には、その人は患者に自分の子ども時代を投射する必要がありませんから、
私のような患者を助けてくれることができます。(以上再び25ページより)


平井です。(^^) 
※ 博士の文章は話が前後することが珍しくないので、
完全に論旨を把握するためには、あっちこっちをひっくり返して探して、
何を言いたいのか読みながら考え、読み手の自分がミラー博士が何を言いたいのかを
まとめるという多少の頭脳労働作業が必要です。少なくとも私はそうです。(^^;))

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以上『闇からの目覚め 虐待の連鎖を断つ アリス・ミラー』より抜粋 

…って…? 驚きです。φ(・_・);?! 

あのアリス・ミラー博士が患者ですって?
一定の評価を受けていた有名な心理療法家が患者ですって? 

大きな驚きではありませんか?

20年間も精神分析療法と精神分析家の養成に携わってきた方が、治療者である
その方自身が、つい最近まで、適切なセラピー(治療)を必要としていて、
自分のための治療家を長年捜し求めていたなんて、想像ができます?w(^_^)? 

ちなみに、プロの精神分析家になるには、高い学歴プラス経験プラス目上からの
引き立てが不可欠のようです。

スーパーバイザーと呼ばれるお師匠さんについて、長い長い修行をして、
しかるべき認定を受けなければなりませんし、一人前の精神分析家になってからも、
絶え間ない精進を重ねスキルアップのため、また自らの精神保健のため?にも、
他者からの精神分析を受け続けるのが流れのようです。

でも、アリス・ミラー博士がおっしゃっているのは、そういうことではなく、
ご自身がこころのセラピー(治療)を求めていた、という告白に等しい意味なのですから。

このあたりの事情は、アリス・ミラー博士のホームページを訪問すると、もう少し
明らかになってきます。 

続く。。。。。。

アリス・ミラー著作

アリス・ミラー博士の翻訳本(数字は原著が発行された年号です)

1.1979年:才能ある子のドラマ アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/8zjpz

2.1980年:魂の殺人 親は子どもに何をしたか アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/8bayq

3.1981年:禁じられた知 精神分析と子どもの真実 アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/9m2cb

4.1985年:「こども」の絵 成人女性の絵画が語るある子ども時代 アリス・ミラー
http://tinyurl.com/db5n4

5.1988年:真実をとく鍵 作品がうつしだす幼児体験 アリス・ミラー
http://tinyurl.com/8vcy4

6.1988年:?本邦未刊?(仮題:呪われた知)アリス・ミラー

7.1990年:沈黙の壁を打ち砕く 子どもの魂を殺さないために アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/dc8e9 

8.1998年:子ども時代の扉をひらく 七つの物語 アリス・ミラー
http://tinyurl.com/avxgv  

9.2001年:闇からの目覚め 虐待の連鎖を断つ アリス・ミラー
http://tinyurl.com/7rteb 

■アリス・ミラー博士がかつて熱烈に賛美し、読者に推奨した本

こころの傷は必ず癒える 抑圧された子供時代に向き合う療法 
J.K.シュテットバッハー
http://tinyurl.com/ag9p8

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●『プライベート・アイズ』受講生KIさんからいただいたメール
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新しい受講生さんから、またもや喜びの声が届きました。(*^▽^*)
ありがとうございますぅ〜。(一部編集してあります)

ここから
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平井 瑛子様
○○と申します。

プラアイテキストは土曜日に無事着き、むさぼるように読み進めました。
とりあえず、斜め読みも含めて全部目を通しました。

体験談は、まるで映画のシーンを見ているようでかなりリアルでした。
文字だけでこんなにリアルに体験できるものかと驚いた反面、
そのシーンでの人物の心の動きが、本当によく伝わってきました。

虐待の形は違っていても、同じような体験をした者にとっては、
言葉を尽くしても表現できないくらいの強い共感をもちました。
ページをめくるのがもどかしい感じもありました。

メールにうまく気持ちを書ききれませんが、
感動と回復への確信は、忘れることができないと思っています。
内容の濃いテキストをありがとうございました。

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KIさんよかったですね。(^^)!

あえて具体的な内容を掲載はしませんが、
今まで長いこと魂の救済?!を探し求めていらしたのですね。

求めれば必ず与えられる、それは法則だと思います。

通信講座『プライベート・アイズ』について知りたい方はこちら↓
http://hiraiyoko.com/nh.html

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●編集後記
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おかげさまで読者が増えてきました。
好きなことを好きなタイミングで書いて、それでいて読者が増えるのは、
ありがたいものですね。

面白く読んでいただければ、それで嬉しいのですが、
気が向いたら感想など送っていただけると、もっとヨロコビます。(@^_^@)

相互紹介やアフィリエイトのお申込みもいただくようになりました。
部数の多寡に関わらず、このメルマガのテーマと合って、かつ読者さんに
役立ちそうだと思われるものであれば、ご紹介していきたいと思います。
でも、そういうものは、かなり少ないですね……。

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