アリス・ミラー『魂の殺人』と『禁じられた知』(68号 2005・6・10)

今回もアリス・ミラーがテーマです。
前回のつづきからいきます。(^^) 
 

アリス・ミラー『魂の殺人』

『才能ある子のドラマ』を読み、違和感を感じつつも、カール・メニンガー博士の
『おのれに背くもの』や、マリ・カリディの『血と言葉』を手に取ったとき以上に、
両目からドサッ!と大きなウロコがまた落ちた想いをした平井でした。

二冊目の『魂の殺人』もまた心理学の書籍としては異色でした。ドキュメントタッチ
なので読みやすかったです。

『魂の殺人』は、子どもへの残酷な暴力が教育として許されてきた現状を訴えていま
す。大量殺人を指揮したあの独裁者ヒットラーと、連続幼児誘拐殺人犯ユルゲン・バ
ルチュの、それぞれ酷い暴力に日々さらされて、誰からも決して助けても救ってもか
ばってももらえなかった、抑圧された悲惨な幼少期にスポットをあてています。

アリス・ミラーはこの本のなかで、『教育』という名のもとに親が子供に日常的に繰
り返し与える、言葉と道具を使った理不尽な暴力が(それはもう拷問に等しいほどのすさ
まじさです)を告発しています。

精神的・肉体的・性的暴力は、当然のなりゆきとして
子供の心身の健やかな成長を阻み、肉体的・精神的・性的暴力を
親から頻繁に受け続けても、誰にも同情もされず助けられない過酷な環境が、
子どもの内面(潜在意識)に激しい憎悪を抑圧させ、沈殿していき、偏執的な世
界観となって、その子どもが長じて結婚し子供をもてば自分の子供に、
またはそれよりも先に、無関係の人間に矛先が向けられた残虐な犯罪して
噴出していく過程を明らかにしています。
 

アリス・ミラー『禁じられた知』

三冊目の『禁じられた知』。

アリス・ミラー博士は、『禁じられた知』で、自身が生業としてきた精神分析
の欠点を指摘し、精神分析界と訣別します。

『魂の殺人』と『禁じられた知』の二冊は、両方とも、かなり分厚い本ですが、学者
特有の難しい専門用語や理論の展開はなく、学術書というより文学的で、その点では
読みやすいです。

当時の平井は『魂の殺人』と『禁じられた知』のどちらかを買おうか迷いました。

『禁じられた知』も、文学者のカフカがあの独特な世界観をもつようになった経緯を
解明していて、とっても興味をひくものでしたから。でも『禁じられた知』の趣旨は
(アリス・ミラー博士が属している!)フロイト派の精神分析療法にたいする批判でした。

自分がなんの派閥にも属さないのであまりピンとこなかったのですが、考えてみると、
これは「弟子」が「師匠」に向かって絶縁状を叩きつけるのと同じですね。

精神分析医の世界も師匠の言うことは絶対?

皆さんがご存じかどうかわかりませんが、
お医者さんの卵にも上司(医師)がいて指導や指示を仰ぐように、
精神分析の世界も同じ……ひょっとしてそれよりも厳しい?
明確な主従関係があるようです。

精神分析を学ぶときも、資格をとるときも、資格をとってからも、つねに指導者から
こまかい指示・指導を受ける。
技術の伝承においては、師匠 (精神分析ではこれをスーパーバイザーといいます) 
の言うことは絶対のようです。

フロイトの精神分析理論を書いた本をたくさん読みつつ、
日本人の自分に役に立ちそうなところだけ適当に選び、臨機応変に、
場合によっては単純化して、ひとつのダイナミクス (力学)として、
つまり、精神的な変化をエネルギーの動きのひとつとして物理的にみなして、
収束されるべき原理原則を推理しながら、適宜利用してきた平井にとって、
フロイトの理論が完璧ではないことは、はなから承知の上でした。
そのため、細かい点について検討する必要はありませんでした。

このときは、精神分析や精神療法(心理療法)関連の文献をあさっていたので、
どちらかといえば『魂の殺人』のほうがこのときは役立ちそうでした。

『禁じられた知』についてさらに言えば、アリス・ミラーはスイス在住で、
この『禁じられた知』を書いた時点ではフロイト派の精神分析家でした。

日本では、精神分析というものがほとんど行なわれていません。
日本で多く行なわれているのは、『精神分析的精神療法』というものです。
精神分析的精神療法は、精神分析と言葉がよく似ていますが、
精神分析とは内容的にだいぶ違います。 

『精神分析的精神療法(心理療法)』は、
「フロイトの精神分析にヒントを得た心理カウンセリング」と言えば、
当たらずとも遠からず、といったところでしょうか。
この『精神分析的精神療法(心理療法)』では、フロイトの精神分析ほど
深く潜在意識(無意識)を探りません。

  

※なぜなら、潜在意識を探っていって原因をつきとめ、
   症状を改善させることは最低三年という長い時間がかかるからです。
   『プライベート・アイズ』では、
   この時間を極端に短く圧縮して短期間で効果があがるよう工夫しています。

スイスでは、地理的な関係もあるのでしょうか、
フロイトからはじまった精神分析が、ほぼ原型に近い形で、
一般の人にもさほど抵抗がない心の治療法として活用されているため、
現職の精神分析医アリス・ミラー博士がこの『禁じられた知』本を出したというのは、
まさに、精神分析界にたいして、まっこうから挑戦状・絶縁状を突きつけたようなもの
だったと想像できます。 

『魂の殺人』も『禁じられた知』も、胸をしめつけられるような内容でしたが、では
じっさいにどんな心理療法がよいのか、私が知りたかった疑問への回答は、三冊のど
れにも示されていませんでした。

そして、本屋さんがだんだんと減ってしまい、心理学の専門書や関連書もあまり並ば
なくなったこともあり、アリス・ミラーからはそのまま離れていました。

次回へ続く。。。

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●備考
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★優れてクールな頭と、ホットな心をもった精神分析療法家の名誉のために申しあげ
ます。精神分析と訣別したアリス・ミラーですが、このアリス・ミラーのあとに出さ
れた本にさえも、よい精神分析家と出会って救われた人が複数登場します。

精神分析に限らず、心理療法に限らず、なににしても、その使い方によって結果は大
きく変わってくるということだと思います。

★もしかしたら、アリス・ミラーの師匠(スーパーバイザー)は、フロイトの衝動理論
から一歩もはみ出ることを許さない人だったのかもしれません。精神分析は国際的・
社会的権威です。組織が大きくなればなるほど保守的・秘密主義的になるのかもしれません。

★その点、一人で気儘に好きなことを考えてやれている平井は、やっているときは師
匠(メンター)がいなくて不安で苦労でしたが、スキルを完成させた今ふり返ると、
自由に試行錯誤して自分なりの仮説を検証していけたので
むしろよかったのかもしれないと思います。

それも自己分析(精神分析療法)としてうまく成功したからこそ、言えることですが。

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●参考文献
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1.1979年:才能ある子のドラマ アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/8zjpz

2.1980年:魂の殺人 親は子どもに何をしたか アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/8bayq

3.1981年:禁じられた知 精神分析と子どもの真実 アリス・ミラー 
http://tinyurl.com/9m2cb


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●感想メールありがとうございます。
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前回発行後も、役に立つ、続けて欲しい、というご感想複数いただきました。
ありがとうございました!

私の研究の成果はプラアイに出し切っているので、無料のメルマガに載せている内容
はそれからくらべて3番目か4番目くらいになるかな。。。

だから、読み手にとっては、3番手、4番手の内容ではつまらなくて、価値がないの
かな、としょげていました。

部数もいつまでたっても1,000部もいかないし、このまま続けるかどうかも迷ってい
ました。でも、無料メルマガの情報だけでもそれなりに人さまのお役に立てているの
だとわかりました。

インター・ネットの特性なのか、無言の賛同の気持ちが100あっても伝わってきませ
ん。たった1通の批難の声のほうが数倍大きく響くのです。

発行者の気持ちとしては、無料のメルマガを発信し続けるのは孤独なものです。
これからも感想メールをお寄せください。
よりよい誌面という形で何倍にもしてお返ししたいと思います。(@^_^@)
 

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編集後記
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先日、地元太白区の紀伊国屋書店に行ってきました。売り場がかなり広くて、心理学
関連の本も一般向けから専門書まで豊富でした。

店のなかを見てまわったのですが、平積みの、一番上の本を手に取った人がちゃんと
もとに戻さないために乱雑になっているのが目立ちました。すぐ下の本と向きを同じ
に置き直さずにいられませんでした。

何年間も実質日本一税金を払っていた斎藤一人さんが、お金に愛情をもちなさいと
おっしゃっていました。一人さんは、たとえ1円玉でも道に落ちて踏んづけられて汚
れていたりするとすぐに助けて(拾って)きれいにしてあげるそうです。平井の本に
たいする愛情もそれと似ているかも。(笑)

プラアイテキストは、本と呼ばれることがありますが、実際は心理学心理療法専門セ
ミナー塾みたいなものです。3ヶ月〜6ヶ月の塾通いってところかな。

内容は、他の本とはまったく違う性質をもっていると自負しています。

が、本屋で『セルフ・カウンセリング』とか、『セルフ・セラピー』、
『癒しの心理学』など、プラアイの趣旨と似たタイトルを見かけると、ドキッ!としました。

(ええっ、これはプラアイと同じということはあり得ないけど、プラアイの何分の一
かぐらいは効果的なものかな?)と一瞬ひゃっとし、ページを開いて
(あ、なぁんだぁ、そうよね。1500円とか2000円の価値の情報よね、
よくあるパターンだったわね)と安心。

そして他にも似たようなタイトルを見て、ドキ!・手に取る・読む・ホッ・戻す。
またドキ!手に取る・読む・ホッとする。

この繰り返しをこの店で何度もやってました。

全部確認し終えて。。。やっぱりプラアイに相当するものは、ありませんでした。

平井は、この値段で出しているからにはオンリーワンはもちろんのこと、
それ以上のペイする価値がないと、そう思っていますから安心しました。(@^_^@) 


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