精神分析理論・幼児性欲・ペニス願望&男性のジェンダー(60号 2005・4・29)

フロイトの幼児性欲理論

いままで、このメルマガでは、フロイトの精神分析理論のなかから、男性器や性欲関係の
テーマを抜きにしてお話してきました。

なぜなら、今日精神分析家の間で優勢な、フロイトの精神分析理論、
「神経症(不安障害・ノイローゼ)は性欲を抑圧した結果である」というのは極論で
あまりに一面的だと感じているからです。

フロイトも最初からこの説を出したのではありません。
これより先に、「ヒステリー(神経症)は、心的外傷(トラウマ)が原因」という
「性的外傷説」を発表しています。

フロイトが治療にあたった神経症(不安障害・ノイローゼ)患者は、
女性のヒステリー(失神したり、身体が麻痺したり、目が見えなくなったりする)患者が多く、
彼女たちの多くが、精神分析治療を進めていくと、幼児期に、親や親戚や、身近な大人から
性的虐待を受けた体験を思い出し、苦痛を訴えた(!)からです。

そこでフロイトは、これが画期的な発見だと確信し、
性的虐待がヒステリーの原因だと発表しました。

しかし世間からは総スカンをくいました。
「そんなおぞましいこと (大人が子供を性的に利用する習慣) など、
絶対ありえるはずがない」という理由で。

そこでフロイトは自説を曲げました。それが「幼児性欲」理論です。
今度の説は、大人には問題がなく、子供が問題だとするものでした。
「子供は、大人に憧れ、大人とセックスしたいと願う性欲がある。
  その幻想を現実に起こったできごとと錯覚して記憶している。
 自分の欲望を現実と錯覚して記憶している。
 神経症(不安障害・ノイローゼ)の原因は、この錯誤にある」としたのです。

※2006年8月現在は、フロイトが最初に唱えた通り、
親から性の対象として体も心も弄ばれる子供がいることが証明されています。
しかし、そうなる前は、親が子供を慰み物にすることは、絶対にないこととして
ずっと無視されてきました。
被害者は、けっして理解されないために、沈黙を守らざるを得なかったのです。
そのために、虐待(濫用)の事実が、闇から闇に葬られてきました。

社会は、「親は子供に対して圧倒的に正しい」といった認識を、
長い長い間、共有してきたのです。

いわく――「子供を愛せない親はいない。世界中どこを探しても」
これは、ほんの10年ほど前までは
誰も疑いようのない「当たり前」の「常識」で、
異論を唱えることはできませんでした。

今日では、フロイトが神経症(不安障害・ノイローゼ)の原因として最初に提唱した、
性的虐待(トラウマ=心的外傷)説が、見直されてきています。
 

精神分析理論 ペニス願望

いっぽう、男性器についてですが、フロイトはこれまたすんごい理論、
『ペニス願望』説を展開しました。 

フロイトいわく……
『男根期』に、女の子は、男の子のおちんちんを見て、自分にも欲しいと羨ましく思う。
本来ペニスがあるべきところに、自分にあるのは、ペニスが切り取られてしまって、
その深くえぐれた傷跡だと思う。女児は、男の子のもっているおちんちんを自分にも、
なぜつけて生んでくれなかったのかと、母親を恨む。
……ですと……。

しかし、この場合はもしかしたら、機能的な意味ではなくて、
社会的な性的役割のことを示唆しているのかもしれません。
昔の男尊女卑は今日の比ではありません。

女性よりも男性のほうが家事を免除され、(それは今でも同じですね)
学歴をつけてもらって高収入の職業につくこともできましたし、
家庭においても地位が高く、親子間では財産を受け継ぐ権利も優遇されていました。

何より、自由奔放に遊んだりできるので、小さな女の子は同年代の男の子にたいして、
(体の他の部分は変わらないのですから)
「私にもおちんちんさえあったら(あんなふうに行儀が悪くても叱られずに自由でいられるのに)」
と羨ましく思ったとしても、無理はないと思います。

その気持ちが、「お母さん、なんで私にはおちんちんがないの?」という言葉になったのかもしれない。

『血と言葉』のなかのヒロイン (既婚で三人の子がいる) が、
精神分析治療の後半で男性への恐怖があったことに気づくのですが、
さらに精神分析していくと、その恐怖は、男性そのものにたいしてではなく、
男性がもつ権力にたいしての恐怖であることが明らかになります。

ふだんの生活では意識しないかもしれませんが、私たちの社会は、
支配と所有の権利は、おもに男性間で共有されています。

総理大臣から、閣僚、国会議員、弁護士、医者、裁判官、判事、警察官、刑事、
テレビプロデューサー、新聞記者、映画監督、会社社長、校長、PTA会長、町内会長まで、
あらゆる組織の幹部、権力の長(おさ)はほとんど男性です。
女性のための団体でさえ、トップはほとんど男性で、女性は極端に少ないです。
ということは、女性の現実とは関係なく、男性の思惑や男性特有の考えで物事が判断され、決定され、施行されやすいということです。 

『血と言葉』のマリ・カリディナルも、うつ状態がひどくなり、
親戚の男性によって精神病院にいれられ、強い薬で思考を麻痺させられ、
自分の事なのに意向も何も聞かれず、自分に施される治療について、すべて
医者とその男の会話によって決定され、進められていくという、
自己決定権をすっかり奪われた状態に置かれました。

ヒロイン(マリ・カリディナル自身)は、まもなく精神病院からの脱走に成功し、
精神分析家のところを訪れたことから、精神分析治療がはじまります。

こうした体験をしていれば、男性のもつ権力にたいして潜在的な恐怖心をもつのも自然なことです。

夢分析のところでもちょっと述べましたが、内面を探っていくと、たとえ同じ事物であっても、
その意味するところは人によってさまざまであることがわかります。

たとえば、ユングが子供の頃に悩まされた夢は、
巨大な男根が恐怖の人喰いとして出てくるものでした。
このように、出てくるイメージと、その意味するところはその人その人で違います。

つまり何が言いたいかというと、たとえ自由連想法で男性器が出てきても、
それがただ女性とセックスしたいという性欲の表現だとは限らない、ということです。 

ここで、プラアイ受講生の、KYさんの例を出したいと思います。

男性のジェンダー(性的役割としての性)とプレッシャー

KYさんは、20代半ばの男性です。 
プラアイを受講される前、こういうお問い合わせをくださいました。 

KYさんからのお問い合わせ(2004年12月)
……………………………………………………………………………………………
今までに、加藤諦三さんや三輪明宏さんの本を読み、そこに書いてあった
自分を変える方法をいろいろと試してみましたが、上手くいきませんでした。 
なので、このプラアイも本当に効くのか疑ってしまっています。
そんな人にも、プラアイは効果ありますか?
もちろん、テキストをきちんと読み、書かれていることを実践することを前提
にしての質問です。
……………………………………………………………………………………………

KYさんの悩みは、ご自分の無気力さについてでした。まだお若いのに、自分
の精神が枯れてしまったように感じていらっしゃったのです。 

テキストを読んでその通り実践するならば大丈夫でしょうとお返事しました。

さて、『プライベート・アイズ』テキストを手にされたKYさん。

自由連想をはじめてみると、男性器についての表現が多いので、自分自身に嫌
気がさしてしまったそうです。

(これは、セオリーに違反しています。そう申しあげました。
KYさんは、他にも、テキストで私がお教えしている大切なところを無視してしまっていました。)

男性器が自由連想で出てきたと聞かされても、私はちっとも驚きませんでした。
自由連想をしたからといって、いちばん最初からいきなり、
その人の潜在意識がもっている本質が出てくるわけではありません。
潜在意識は個人にとってもっとも重要な情報を保存しておくところです。

もしも、パソコンを開いてちょっと操作したくらいで、
一番大事なプログラム部分がしょっちゅう露出したら、
セキュリティの面で危険きわまりないでしょう?

個人の潜在意識も、脳も、その人自身にたいして答えを隠したり、
あるいは暗号や信号のようにしてすぐにわからないように
意外な形で返事をしてくることも珍しくないからです。
この現象のことは、『プライベート・アイズ』セミナーテキストに
そのまま同じことが書いてあります。
 

だいいち、自分の好きなイメージではなかったにしろ、そこには、必ず何かし
ら、その人がその時点で理解できる以上の、真剣で切実な意味がこめられてい
ることもあるのです。

それに、平井は、たとえ、受講生さんが、どんな醜い、みっともない、人には
言えない恥ずかしい想念を抱いていたからといって、それだけで拒絶したり
嫌ったりなんて、いたしません。『治療』の枠内であれば、問題はないので
す。(^^)  

あんのじょうというか、何度かメールのやりとりを続けていくうちに、KYさ
んの自由連想で最初に出てきた男性器のイメージは、どうやらセックス、性欲
そのものの願望を意味していたわけではないことが、しだいに見えてきまし
た。(別にそうであってもかまわないのですが)

男性器は、KYさんにとっては、男性であることの象徴でした。性行為のセッ
クスや、生物学的な意味での男性ではなく、ジェンダーとしての男性。

つまり、私たちが生きている社会のなかで『男性』が求められている役割や、
負わされている期待、男はこうあるべきだというプレッシャー、完璧なまでに
強い肉体や、強い腕力にたいしてのコンプレックスが、自由連想のときに、男
性器をシンボル(象徴)として、潜在意識から返答されてきていたらしいので
す。

KYさんについては、これ以上、家庭環境や親子関係のことまでくわしくは書
きませんが、少し被害妄想があるのは、おそらく、ご自分でもわかっていらっ
しゃる通り、安心感が根底にないからだと思います。

家庭というものは、本来、子供をつくり、自立するまで養育するためにありま
す。

が、子供が強くたくましく羽ばたけるような力をつけてあげられない親た
ちもいます。 
子供に偏った情報や、不安になる情報だけをひんぱんに与えて、子供を
コントロールしようとする危険な親たちです。

そういう親は、人種や身分や社会的な地位や、経済状態などと関係なく存在します。
どこにでもいるし、いろんなところで見かける、フツーの人です。
普通の顔とか、態度をしていますから、何度も話してみないとそうとは簡単に区別できませんよ。(^^;

子供を支配したい親は、家庭の中では、他の人には絶対言わない、おく
びにも出さないことを子供に向かって言います。「外はこわいところなんだ。
あんたはいじめられる。あんたは誰にも相手にされない。人が口ではなんと言
おうと、あんたは嫌われているんだ。この家のなかだけ、うちの家族だけが、
世界で一番唯一安心で安全な場所なんだ」
というようなことを吹き込むわけです。親自身が、社会にたいして偏った見方をしているのです。
人間に対して、不信感と恐怖心をもっているわけです。

こうしてみると、家庭というものは、ある人にとっては安らぎの場であり、あ
る人にとっては危険な場所です。

   家庭=安らぎの場。
   家庭=危険な場所。

その両方とも真実です。 

KYさんが実際に、ご両親や、その他の環境からどういう影響を受けているか
は、ご本人の自己分析におまかせしたいと思います。(^^) 

最初「自分は無気力な人間だ」と嘆いていらしたKYさんですが、先日のメー
ルではどこか、変化のきざしが見えていました。 
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自分自身をしっかり確立しないとね。
こういう風に考えるに至った原因とかも追求してかないかんですね。

プラアイでもっと自分自身を知らないといけないですね。
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精神がすでに枯れてしまった、無気力・無感動だと、そう自分のことを思って
いたKYさんですが、いえいえ、こうして精神分析で少し掘ってみただけでも、
他の方と同じく、いろんな素晴しい可能性が隠されていそうです。

KYさん、自己分析は、これからが本格的なスタートですね。どうぞお続けく
ださいね。

ご自分をどんどんと深く掘っていくと、必ず、今までずっとそのありかを隠し
て眠っていた、思いがけないお宝、資源にまでたどり着くものですよ。(^^) 

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発行者 グリーニング・ランド 平井 瑛子(ひらい・ようこ)
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